Wakkanai 2/3 〜 EOS M3で旅。12月の稚内で寿司。

宗谷岬を後にして宗谷国道を南下し、今度は左手に稚内空港を見ながら快調に走る。信号がほとんど無いし通行量も極めて少ない上に、雪と氷で白くなった路面が鉛色の空と海に囲まれたパノラマに、ここが日本だとは思えなくなってきた。

思わずアクセルを踏み込みたくなる風景だが、すぐ下は走り慣れない凍った路面だということを思い出して慎重さをキープする。


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さっきまで空は晴れていたのに、稚内の市街地に近付くに連れて徐々に吹雪いてきた。さらに通行量が増えるに従って路面はますます踏み固められて滑りやすくなり、青信号で発進するたびにタイヤが滑って電子制御システムが「ガガガ」と作動する。
現地のドライバー達も、みな車間距離を広く取って慎重に走っていた。

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温泉施設「童夢(公式サイト)」に到着したのは16時過ぎだが、すでに辺りは真っ暗になっていた。ひなびた温泉施設かとおもいきや、大きくて立派な造りの施設で、中では老人を中心にとても賑わっていた。
この駐車場の路面も氷でツルツルになっていたが、黒いネコが悠々とその上を横切ったので驚いた。

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日中に晴れていれば露天風呂から利尻島や夕陽が見えるらしい。闇夜に現れる白い波頭を眺めるのも悪くはなかったけどね。

しっかりと身体も温まったのでようやく(とは言えまだ稚内での滞在は4時間ほどだが)ホテルに向かう。その道すがら、漆黒の闇に覆われた左手の海岸線から「ぬっ」と鹿が現れた。慌ててブレーキを踏んだが、スタッドレスタイヤとABSは緩慢ながらちゃんと止まってくれた。前後にクルマは一台もいない。
気を取り直してまたクルマを走らせると、1分も経たないうちにまた鹿が今度は「ひょい」という感じで道路を横切った。海岸線とはいえ、ぱらぱらと住宅が立ち並んでいるエリアだ。相変わらず後ろからはクルマが来ないのでココぞとばかりに窓を開けながらカメラを取り出したが、既にその鹿は姿を消していた。

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ホテルにチェックインした時に、この辺りでオススメの寿司屋を予約してもらった。
部屋で身支度をして外に出たら、かなりの吹雪になっていた。寿司屋まではホテルから歩いて5分前後の距離だったが、街はしんと静まり返っており、他に歩いていたのは外国人の若いカップルだけだった。

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18時前だったせいか10人近くは座れそうなカウンターに先客は居なかったが、2階では地元の人々の宴会が催されていた。
握ってもらう前に少しつまみたかったので店主に今日のオススメを聞くも、なんとも要領の得ない答えが帰って来たので、メニュー表にあるオススメマークの一品料理をいくつか注文した。70歳前後と思しき店主は悪い人ではないのだが、レベルの高い東京のサービスに慣れすぎてしまっているせいで、その店に入ってしばらくは雰囲気を理解できずに疎外感を感じてしまうのは旅先では良くあることだ。

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かすべ(エイ)の揚げ物。思ったより身がギュッと詰まっていて美味しい。

Sake with urchin
ウニ酒(1合1,600円)。見ての通りの新鮮なウニを猪口に入れ、そこへ熱燗を注いでちびちびと飲み、酒が終わったら酒が染みこんだウニに塩を付けて食べる。ひれ酒はよく知られているが、ウニ酒は初めてだ。ウニは潰さずに飲むので、さほどウニの味がするわけではなかったかな。

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ほたてしんじょう。ここにもウニが。こりゃあ尿酸値が心配ですぞぉ。

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この店の看板メニュー的な存在の、カニの内子と外子。タラバガニの卵巣らしい。尿酸値が・・・。
店主によると、ロシアの乱獲のせいで日本にカニの在庫が少なくなり、現在ではこのメニューも過去のストックを食い潰しているそうで、「来年辺りにはもう厳しいんじゃないかな」とのことだった。
ところが、ホテルに戻ってバーのマスターにそんな話を向けたら「いや、全然減ってませんよ」と言っていたので、真偽の程はわからない。
だが、ほとんどのカニは築地を始めとして高く買う客の元へと送られるので、稚内でカニが食べられることはあまりないと言っていた。大間のマグロでも同じような話を聞いたことがある。

Night snow
後からカウンターに座った地元の客が「今夜は70cmぐらい積もるんじゃないか」と話していたんだが、1時間半ほど食べて外に出たら見事に20cmほど積もっていた。

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21時前なのに、街には誰も歩いていない。

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トレッキング・シューズを履いて行ったので全く寒くもなく濡れることもなかったが、くるぶしの上から雪が中に入って来た。

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少し散歩をしながらホテルに戻り、いつもの様にホテルのバーへウイスキーを飲みに行った。地方都市のホテルのバーで良く見かける風景だが、すでに出来上がった団塊世代のおっさん達(ライオンズクラブのメンバーかもしれない)が盛り上がっていて、端正な顔立ちの若いバーテンダーとホール係の娘(これも良く見かける組み合わせだ)がせわしなく働いていた。折を見てバーテンダーの兄ちゃんに地元の人々の暮らしや、カニの密漁のこと、最近は街に出てこなくなったロシアの若い漁師のことなどを楽しく聞かせてもらい、気持よく酔っ払って部屋へと戻ってすぐに寝落ちた。

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夜明け前の風景を部屋の窓から。良い部屋を割り当ててくれたな。
昨夜のバーテンダーの話によると、この辺りの雪は乾燥しているので、降っても降っても強い風に雪が吹き飛ばされるため降水量ほども積雪しないのだという。その代わりに巻き上げられた雪が地吹雪になるのだと。

2日前からの二日酔いでまだ頭が痛かったのだが、二度寝をせずに散歩に出かけることにした。バーテンダーからは「ノシャップ岬から観る日の出は最高ですよ」と聞かされていたが、さすがにクルマを運転して出掛けるほどの元気はないので、ホテルのすぐ近所へ。

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幸いにも稚内駅付近で唯一の見どころとも言える「北防波堤ドーム(公式サイト)」がホテルの真裏にあった。
夜明け前からもう除雪車が何台もせわしなく仕事をしていた。

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ドーム横の階段を登り、ノシャップ岬を望む。

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屋根があって雪も氷もない道路はココにしかないのかもしれない。少しずつクルマがやって来ては人が降り、犬の散歩やウォーキングを楽しんでいた。

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そろそろ朝日がのぼる時間だ。

となりでは除雪車が同じ場所を何往復もしながら雪を削っている。

Wakkanai 3/3 〜 EOS M3で旅。12月の稚内、北防波堤ドームとノシャップ岬と塩ラーメン。』へつづく>>>