Kahori Maki ~ 牧かほり 『詩展 〜シルエットの語りごと〜 』

原宿にあるギャラリーL’illustre Galerie LE MONDE(公式サイト)では、以前に投稿した『“Super Everyday Ordinary” by Grace Lee』に続いて、牧かほりさん(BUILDINGのページ)の個展が4月12日まで開催されている。

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牧かほりさんは、卓越したセンスを携えて緻密に描かれた作品で、日本はもとより海外でも数多くのプロジェクトを手がけていることで知られる。言ってみれば日本のイラストレーション界のスター的な存在の一人だ。
しかしご本人はいたってクールなもので、名声を得たからといって後進のイラストレータに先輩風を吹かすようなこともなく、いつもご自身と向き合いながら新たなスタイルを模索し続けている。そんな彼女のパーソナリティに魅了されるファンも少なくない。

かくいう僕もその一人だ。
彼女にしか作り出せない圧倒的な世界観の作品を築き上げながら、しかもその価値をマーケットに認められ、まだまだそのスタイルでやっていけそうな段階でさえ、新たなスタイルを追い求め続けることを止めない「孤高」とも言える求道者のような姿に、いつも大きな刺激を受けている。
(このことはCAT'S FOREHEADに「牧かほりのアトリエをゆく」に投稿したので、お時間があればご一読ください)


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今回の牧さんの展示で彼女が我々に提示してみせたのは、「シルエットと言葉」だ。

色やテクスチャを排した“シルエット”は、二次元の“絵”の構成要素をもっともシンプルにした形態だが、一見すると(その絵とは)関係のない“言葉”とともに現れた“シルエット”は、そのふたつが組み合わさって静かに語りはじめる。
正確には彼ら(シルエットと言葉)が語り出すのではなく、彼らが対峙した者の頭の中にぐいぐいと虚空を作り出し、鑑賞者がそこを埋めるように「自らが何かを語り出す」のを待っている、ということなのだろう。

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複雑なアウトラインに象られたシルエットは、ロールシャッハ・テストのように様々なイメージを喚起する。このシルエットの作品は、緻密なテクスチャで描かれた動物や植物など、よく知られた牧さんの過去の作品をベースに創られたそうだ。
黒く塗られたシルエットに、それぞれの作品の記憶が閉じ込められているかもしれない。

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今回の展示の会場構成は「立体集団ガリエル(公式サイト)」によるもので、ギャラリーのベランダまでをも会場の一部として取り込むアイディアで、そこかしこに配置された立体オブジェが展示に豊かなリズムを与えている。
写真中央に見えるのは、様々な言葉が書かれた牧さんからのお神籤である『マキミクジ』。

早速『マキミクジ』引いてみると・・・

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牧さんからのご宣託は「心をからっぽに」でした。コスモ石油の反対ですね。
個人的に「今いちばん必要なことかもしれない」と心に沁みたので、早速スキャンしてiPhoneの壁紙にしましたよ。
iPhoneのホームボタンを押すたびに、心をからっぽにするよう努めている今日このごろです。
ありがとうございます。

皆さまもぜひ、作品と対話をするために訪れてみてください。

牧かほり 個展「詩展 〜シルエットの語りごと〜」
会期:2015年3月31日 - 4月12日
営業時間 : 12:00 - 20:00 (最終日-17:00、月曜定休)
場所:L’illustre Galerie LE MONDE(東京都渋谷区神宮前6-32-5 ドルミ原宿201)
Tel : 03-6433-5699