目があったら微笑みを返した、と思ったら突然踵を返して水たまりを駆け抜ける少年。
白砂の路面、サンゴ岩を積んだ石垣、屋根に乗っている沖縄赤瓦、そして花や葉といった眼前の風景に雨が染みこんで、その表面を濃くしている。
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「グック」と呼ばれるサンゴ岩の石垣の隙間からは、南国特有の鮮やかな花が顔を覗かせている。
竹富島の町並みは重要伝統的建造物群保存地区(Wikipedia)として選定されているほか、竹富島憲章(公式PDF)によって島の景観が注意深く守られている。この憲章が発効される前に建てられた家の中には、2階建てであったり瓦の色や形が異なっていたりするものがあるが、新たに建築する場合は新たなルールに則って建てられねばならない。つまり、これから時間が経つにつれて、少しずつ過去の町並みが蘇ることになるのだ。
(竹富島の住居の様式についてはこのHPの記述が参考になる)
石垣に花よりもたくさん生えているのがこのキンチョウ(錦蝶)という植物。ナウシカっぽいうというか・・・いささか気持ち悪くもある。
なんとも力強い植物たち。
旅館で予約してもらったのは新田観光(公式サイト)の水牛車。島内にはもう1社が水牛車観光を営んでいるが、狭い集落で幾度か2社の水牛車に出くわした折に観察していると、新田観光の水牛のほうが躾が行き届いているような場面が何度か見受けられた。ツアーガイドも新田観光の方が地に足の着いたというか、実直に町の歴史を観光客に伝えようとしている印象を受けたが、あくまでも短時間に受けた個人的な印象ということで。
水牛車に乗って驚いたのは、水牛がとてもお利口なこと。スタッフは水牛を言葉でコントロールしているように見えたし(実際には少し手綱もさばいていたが)、水牛が観光ルートを覚えている上に、ガイドが長めの説明をするスポットでは自ら停まる。ホイルベースが長い客車の内輪差のために、角を曲がる時には道の外側を歩いていたりもして。
しかもベースに戻って来ると、所定の位置まで車を引いた後に、人間の助けを借りることなく金具から離れて休息に入る。
長い角を器用に避けながら“くびき”を置く。
あ〜、疲れたなぁモウ。てな具合に休息に入る。
水牛車に揺られる間にツアーガイドが竹富島の歴史のほか、野に咲く花や島の風習などを教えてくれる。柳川や松江城の川下りでも船頭さんが歌を交えながら同じように歴史を説いてくれたが、40歳を過ぎてようやくその土地の歴史や文化を知ることが面白くなった。
この動画(かなり端折っているけど)でイケメンのガイドさんが歌ってくれているのは、前半の三線の弾き語りが『新安里屋ゆんた』で後半のアカペラがその元歌となった労働歌(Wikipedia)。竹富島にはこの唄のモデルとなった安里屋クヤマの家があり、今でもご子孫が生活をしておられる。
「なに見とんじゃいワレ!」。今回のツアーで車を引いてくれたワカバちゃんは、3歳の女の子だから、そんなことは言わないか。でも、仕事終わりでちょいとご機嫌斜めだった。
水牛車のガイドによると、本来のシーサーは屋根の上に一体だけ置かれていたが、建築様式の変化とともに家に門を設えることになった影響で、一対が入り口の左右に置かれるようになったとのこと。屋根に一体だけあるシーサーは、その直下にある仏壇を守っているそうだ。本来のシーサーは、家を建てる時に出た資材を用いて大工さんがこしらえるため、家によって姿かたちが異なるらしい。(Wikipediaにはそうした記述はないが)
水牛車観光を終えて茶屋でブルーシールアイスクリームを食べ終わった頃に、突然空が晴れてきた。お久しぶりです青空。
せっかく晴れたので、島内の数少ない観光スポットの『なごみの塔(Wikipedia)』に登ろうと近付いたら長蛇の列が。
待つ時間がもったいないので、30分ほどぶらぶらと散歩をして戻ったら列は短くなっていた。が、またもや空がどよ〜んと曇り始めた。この塔はそれほど高くはないんだけど、階段が狭くて急なのでワリと怖い。
なごみの塔から東側を望む。青空だったらなぁ。塔の下では帰りのフェリーの時間を気にする人々が並んでいるので、数秒ほど見渡したらさっさと降りる。
なごみの塔から数分も歩けば、夕陽がきれいに拝めることで知られる『西桟橋』にたどり着く。夕陽にはまだ早いせいか、左右の海岸も含めて3〜4名しかいなかった。
これが『西桟橋』。穏やかな水面と遥か彼方で雨を降らしている重い雲を眺める。島についた頃の気温は22度だったと思うが、ビーチは風も強くて寒かった。
ビーチに佇む一人の女性。まるで絵画のようだ。
しばしここで
海岸ちかくの空き地で、人も綱もなく完全にフリーな状態の水牛が懸命に草を食んでいたのでギョッとした。恐る恐る近づくもこれが限界。
石垣に咲き誇る花たち。この島ではハイビスカスも一年中咲いているそうだ。
島で見かけたネコの多くはボロボロな風体で、おっとりしていながらも警戒心が強かったが、一匹だけ花を背に座って気品を漂わせているネコがいた。
この後にざぁっと雨が降りだした。
宿に戻る頃には雨も止んだ。
さて、晩飯だ。
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