ZUBE 〜 ズベさんの作品が東京モーターサイクルショーに

熊本の山あいのアトリエで、鉄の廃材からユーモラスで不思議な迫力を醸し出す作品を創る、ZUBE(ずべ)さんと呼ばれるアーティストがいる。ご本名は藤本髙廣さん。インパクトのある彼の風貌と、アトリエのそこかしこに並ぶ無骨でひょうきんな作品たちとのコントラストから、僕は勝手に「熊本の怪人アーティスト」と呼んでいる。

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熊本市に河原町という戦後の昭和の風情が置き去りにされたような一画があるのだが(「Y氏は暇人」というブログに写真が多く掲載されている)、ここで開催されるアートイベントで僕が審査員を務めたことがZUBEさんと知り合ったきっかけだ。3度目のイベントの翌日に現地の方のご好意で彼のアトリエを訪れたのだが、スタジオジブリ作品に出て来そうなアトリエと作品とご本人、そして彼が滔々と語る数奇な作家人生譚にすっかり打ちのめされてしまった。こんなに面白い人が熊本の山の中にいたのかと。

当時のZUBEさんはまだ鉄工所との二足のわらじで創作活動をしていたのだが、程なくして鉄工所を畳んでアーティスト一本で活動を開始すると聞いて何か応援をしたくなった。もっと多くの人に彼のことを知ってもらうべきだと常々考えていたこともあって、すぐに熊本へ飛んで彼のアトリエを訪れ、これまでの経緯から今後の展望など濃密な話を伺い、CAT'S FOREHEADに『ZUBEさんインタビュー「乗れないバイクが導いた奇跡」』を掲載した。

それが昨春の事だったのだが、昨年の暮にZUBEさんから『東京モーターサイクルショー2015』に作品を展示することになったとの連絡が入った。彼はオートバイの冒険家として知られる風間深志さんやバイクレーサーのケニー・ロバーツ(!)と親交があるし、何よりバイクをモチーフにした作品で知られるアーティストだから、このチャンスは彼の作品を世に知らしめるには最高の舞台ではないかと、まるで自分のことのように心躍らせてイベントを待ち侘びていた。
ちなみに、ZUBEさん自身はバイクには乗らないそうだが(笑)

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知らせを聞いてから随分と経ったが、ようやくイベントが始まったので愛車のスーパーシェルパを飛ばしてビッグサイトに到着。臨時のバイク駐車場にはあらゆるカテゴリのバイクが停まっていて、一台ずつ眺めても飽きないし、中にはHONDAのFUSIONをカスタムしたサイドカーなんていうのもあったりして。それらが一同に会している様は、なんとも目に麗しい。

カスタムバイクは後でゆっくり眺めるとして、そそくさと会場に向かってエスカレーターを降りたら・・・すぐ目の前にZUBEさんの作品がどーーーーんと展示されていた。そこに驚くほどの人だかりができていて、みんなが一生懸命に写真を撮っている姿を見て思わず感激しましたよ。

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展示されている作品に近づくと、傍らにはいつもの笑顔のZUBEさんが。聞けばこの展示をするために随分と苦労をなさったようで、ご本人曰く「奇跡の連続」だったそうだが、よくよく話を聞けばそのほとんどは彼の人柄に惚れた、(奇跡ではなく)彼の周囲にいる心温かい人々のサポートのリレーの賜物だと感じずにはいられなかった。

この巨大な作品を熊本から東京へと(そして復路も)輸送することは色々と大変だと思うが、このイベントをきっかけとしてより大きなチャンスがZUBEさんに訪れることを心から祈るばかりだ。

この投稿をご覧の皆さまにも、ぜひZUBEさんのWEBサイトから彼の独特な作品の世界に触れていただけると嬉しく思います。